【第1回】フルーツの香りと色の謎
〜全4回連載〜
ワインの裏ラベルやソムリエの解説を読んでいると、ふと不思議に思うことはありませんか? 「ラズベリーを思わせる爽やかな香り」「黒い果実やプラムの濃厚な味わい」……。
「えっ、ブドウ100%で作ってるはずなのに、なんでチェリーやカシスの味がするの?」 ワインを好きになりかけた頃、誰もが一度は抱く疑問です。
実はこれ、ソムリエたちがカッコつけて気取っているわけでも、ワインに果汁をこっそり混ぜているわけでもありません。
ワインが発酵するとき、酵母の働きによって「イチゴやカシスと同じ香り成分」が実際に作られているんです。
さらに面白いのが、私たちの脳の仕組み。完全に同じ成分じゃなくても、似た香りがいくつか合わさると、脳が勝手に「あ、チェリーだ!」「レーズンだ!」と昔の記憶を呼び起こして認識(錯覚)している側面もあります。
グラスの中の小さな分子と、私たちの脳のちょっとした探知能力。そのダブルの作用で、私たちは本物のフルーツを感じ取っているんですね。
ワイン通の人たちがよく使う「赤い果実」と「黒い果実」という言葉も、覚えてしまうと実はすごくシンプルです。

ワイン会などでソムリエが「これはキュートな赤い果実のニュアンスですね」と言っていたら、心の中でこう変換してみてください。 「あ、イチゴジャムや甘酸っぱいさくらんぼみたいな、可愛らしい甘酸っぱさのことだな」と。
逆に、グラスの底をのぞき込むようにして「熟した黒い果実やプルーンのような……」なんて呟いていたら、 「あはは、要するにブルーベリージャムとかレーズンみたいに、濃くてジューシーな旨みのことね」と思えば大正解です。
今夜ワインを飲むときは、ぜひグラスを軽く回して、そっと鼻を近づけてみてください。 「うん、これはイチゴ狩りの時の匂いかな?」「いや、干しぶどうっぽいぞ」なんて思い浮かべられたら、あなたも今日から立派なテイスターの仲間入りです。
自分の鼻が開けた「記憶の引き出し」を楽しんでみてくださいね。
💡 今夜試せる「通っぽい」ひと言メモ
カシスやレーズンっぽさを感じたら: 「凝縮感があって、熟した黒い果実の旨みがしっかりしてますね」
イチゴやチェリーっぽさを感じたら: 「軽やかで、綺麗な赤い果実のニュアンスがありますね」
さまざまなブドウから作られるワインの個性を知りたくなったら、本編の「味わいを決める、千の個性 — ブドウ品種の物語」をご覧ください。